井 上 研 究 室
Science for Human Services based on Applied Behavior Analysis

鳥取大学 医学系研究科 臨床心理学講座
Tottori University Graduate School of Medical Sciences Department of Psychology
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2023
自閉スペクトラム症のある児の保護者向けオンラインペアレントトレーニング:オンデマンド型のプロトタイプ開発
ペアレントトレーニング(PT)は、発達障害や自閉症スペクトラム障害(ASD)のある児の親のメンタルヘルスやその子どもの行動を改善するための有望な支援とされています。この研究では、オンデマンドPTのプロトタイプを開発しました。ASDと知的障害のある3歳8ヶ月の子どもの母親とASDと診断された4歳5ヶ月の子どもの母親が参加しました。プログラムは各セッションの講義ビデオを視聴し、確認テストに答え、宿題を提出するという もので、6セッションから構成されていました。提出された宿題や質問に対するフィードバックは 、研究者が電子メールで提供しました。結果、参加者は全セッションをスケジュール通りに視聴し、すべてのテストと宿題を提出していました。セッションごとのテストの正答率は両者とも100%でした。子どもたちの4つのターゲット行動のうち、2つが統計的にも有意に変化しました。また、事前・事後のアンケートでは、親のうつ状態や育児ストレスのスコア、子どもの行動全般のスコアの改善が見られました。本研究のプログラムは、オンデマンドのプロトタイプとして開発され、2事例で良好な結果を示しました。今後、症例数を増やすとともに対照群の設定・比較も必要です。
自閉スペクトラム症のある人にとってのビデオ通話のストレスと利点
本研究は、自閉症スペクトラム症(ASD)の傾向・診断のある人と定型発達の人の間で、ビデオ通話によるストレスとその効果を比較しました。252名の参加者のうち151名がウェブ上のアンケートに回答しました。ASD群はTD群よりもビデオ通話を好む可能性があることが示唆されました。また質的方法(KJ法)の分析結果より、ASD群はTD群に比べ画面からの光刺激によるストレスや、視覚刺激による会話への集中力の欠如を感じやすいこと、またストレス刺激に対して、機器操作などによる様々な対処をしていることも示されました。ビデオ通話をオフにしたり、テキスト通話に切り替えたりできるようなルールをあらかじめ決めておくことなど、ASDのある者にとってのビデオ通話のメリットを引き出すコミュニケーションの環境を整えることの重要性が示唆されました。