地域における自閉スペクトラム児の早期発見・支援モデルの構築
日本生命財団の助成による研究プロジェクト 2020~2022
倉吉市子ども家庭課と研究室の連携のもと乳幼児健診から、親支援としてのペアレントトレーニング、保育園での早期療育までのシステムを実装し、その効果を検証していきます。
本ページでは成果に対する情報公開として概要や経過について発信していきます。
なお本年(2021)の第39回日本行動分析学会(オンライン)の自主シンポにおいて本プロジェクト途中経過を発表させていただきます。
本プロジェクトの背景
ABAはASDの早期療育の強力な方法として多くのエビデンスを示すとともに北米を中心に拡大を見せています。しかしながら、その支援を本格化するためには多くが診断確定後となり、3歳以前からの開始については解決すべき問題を含んでいるとされています。
一方2歳代でのASD診断技術の進歩から2歳代での早期療育のスタートとエビデンスの確立が望まれています。
本邦では発達障害者支援法により、早期発見と療育体制の整備、家族支援の体制整備が自治体の義務として定められているものの、その実施は自治体裁量であり、人口規模、予算規模、自治体の考え方などによって足並みはそろっておらず、格差が生じています。
この解決の一つの手立てとして、各地域の強みを生かしつつ地域の専門機関と連携して持続可能な体制を構築し、そのノウハウを共有していくことが考えられます。
本プロジェクトの目的と方法
ASDに関して早期スクリーニング体制の確立のために、乳幼児健診体制の見直しにより、エビデンスのあるスクリーニング方法としてM-CHAT、SACS-Jの実装を図り、その効果を追跡的に分析検討します。
1歳6か月児健診で要フォローとなった児とその保護者について、地域の特徴である公立保育園の資源を活かした療育支援体制を確立するため、園をベースにした発達的行動分析プログラムとしてJASPERをベースとしたアプローチの導入、保護者に対する短縮版ペアレントトレーニングの実施、巡回コンサルテーションの効率化を行います。
これによって、 1歳6か月児段階でのASDハイリスク児と家族支援、園支援の体制を地域ベースで実装し、持続可能性を含めて検討していくことを目的としています。
倉吉市における乳幼児健診システムの再検証と改善
平成29、30年度より1歳6か月健診に導入したSACS-J及びM-CHATを受けた児について追跡調査を行い、検証していく予定です。
巡回相談における相談項目確認シートの導入と効果の検討
保育士の日常保育場面を通した発達評価の向上を目的として社会性、あそびの発達についてのビデオ研修ツールを作成し、相談対象のスクリーニングに対する効果を検証していきます。
保育士が行う短縮版ペアレントトレーニングの普及と効果検証
発達障害もしくは傾向のある子どもの保護者を対象として保育士が各園で実施する短縮版ペアレントトレーニングの普及と効果検証を行います。
ASD特性のある幼児に対するJASPERの実装と定着
健診後フォローにおいてASD特性のある幼児に対してJASPER(Joint Attention, Symbolic Play, Engagement, and Regulation)をもとにした早期介入アプローチを導入し、その効果を検討するとともに支援者養成を行っていきます。