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「人生において大切にしたいこと」に関するアンケートご協力のお礼と結果のサマリー

 

調査にご協力いただいた皆様へ

 

この度は「人生において大切にしたいこと」に関するアンケートにご協力いただき、誠にありがとうございました。

 

お礼に代えましてアンケート結果の要約をお知らせいたします。本研究は学会誌への投稿を予定しております。本研究の結果が皆様の心の健康の向上に繋がるよう今後も研究を進めていく所存です。

 

Ⅰ.問題と目的

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセプタンス&コミットメント・セラピー (ACT) は, 心の健康の問題に有効であることが示唆される心理療法です。その一要素に価値への介入が含まれ, その介入では価値 (人生で大切にしたいこと) を言葉にし, 明確にすることで価値に沿った行動を増やしていくことを目的とします。本研究では, この価値を良い結果の存在へと接近する「促進焦点価値」と悪い結果の不在へと接近する「予防焦点価値」に区別し, 心の健康により効果的な価値はどちらか, 価値に沿った行動の動機づけの高さや価値に沿った行動に対する感情の強さを抑うつの高さによる影響を考慮した上で調査し, 検討しました。

 

Ⅱ.方法

研究対象者・分析対象データ

アンケートはGoogle Formを用い, URLをSNS等で共有することで回答を募りました。無効回答はなく, すべてのデータ336名を分析対象としました。

 

分析方法

 各変数について記述統計量を算出しました。また抑うつの高さと価値の違いの関連や, 価値の領域(人間関係, 趣味, 健康)に関する検討ではχ2検定を行いました。さらに価値に沿った行動の動機づけや価値に沿った行動に対する感情に関する検討にはロジスティック回帰分析を行いました。

 

Ⅲ.結果

 調査の結果, 抑うつの高さを調整した時, 価値 (促進焦点価値/予防焦点価値) の違いによらず, 価値に沿った行動への動機づけはどちらも高いことが明らかになりました。ただし, 予防焦点価値よりも促進焦点価値に沿って行動する方がポジティブな感情を感じやすく, ネガティブな感情を感じにくいことが示されました。さらに, 価値の領域 (対人関係, 趣味, 健康) によって, 想起されやすい価値の傾向は異なっていました。

 

Ⅳ.考察

 本研究では抑うつの高さに関係なく促進焦点価値に沿った行動を促すことでポジティブな感情を喚起させられることが示唆されました。先行研究では, ポジティブな感情は精神的健康の向上に有効だといわれています。そのためポジティブ感情を喚起させる介入が, 精神的健康の向上に繋がると考えられます。したがって, 促進焦点価値に基づく介入は抑うつの高さに関わらず, 精神的健康の向上において効果的である可能性が考えられます。ただし, 想起しやすい価値の傾向や, 行動に対する感情の感じ方には個人差がある可能性もあり, 必ずしも促進焦点価値を持つように勧めることが良いとは限らないと考えられます。今後, 価値の介入について個人差に関する知見の蓄積が望まれます。

 また, 自由記述欄において「人生において大切にしたいこと」に関する説明不足や, 質問への回答のしにくさを指摘するご意見等をいただきました。アンケート実施前に価値について説明する機会を設けたり, 他の質問紙を用いるなど, 今後の研究に向けて改善の余地が残されました。

 

Ⅴ.社会的貢献

 本研究の知見は, ACTにおける価値の介入をより効果的にするための新しい視点を提供しました。本研究の知見がACTの発展に資するものとなり, 実際の支援に生かされることで心理臨床に貢献するものと考えられます。

 

担当者 鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻 西本彩乃(にしもとあやの)

​* 本アンケートの詳しい結果は学会大会、学術雑誌にて発表予定にしております。

 

 

 

 

 

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